小さな島にいると、
アニミズムを、
生きるもののオーラを、自分自身が感じやすい体質に変わる気がして
とにかく心地が良い。
二日目の午後、私は、
「豊島」という島で、
自転車を走らせていた。
着岸した側とは島の反対側にある「心臓音のアーカイブ」というアート作品を目指して居た。
もし、ここに行く機会のある人は、07703で検索してもらえれば、私の乱れた心臓音が聞けるはずだ。
ここにたどり着く寸前の、砂利道で
使い古したスクーターに乗ったおっちゃんと出会った。
おっちゃんは、私と出会って60秒目には、
「おっちゃん家に泊まったらいい」
と言った。
その日の夜どの島に泊まるかすら決めていなかった私には、
ナイスタイミング !
とは、私でもならない。
おっちゃんと一度別れ
私の乱れた心臓音をアート作品の一部とし、
港へ戻ろと自転車を走らせると、
おっちゃんがまた現れる。
またちょっと話す。
また泊まったらいいと誘われる。
自転車を17時までに返す必要があって
残念だが、留まれない。
と話をすると、
一度港に帰って自転車を返して、
港から、おっちゃんの家の近くの港に着岸する、小豆島行きの船最終に乗ればいい。
との話。
おっちゃんのお家に泊まりたくなって来た。
港へ戻り、同じ豊島内の港のチケットを求めると、
「どこに泊まるの?」とチケットを販売しているオジさんが、聞いて来た。
「泊めてくれるおじちゃんがいて」と返すと、
「大丈夫かよ。。?そのオジさん。。。若いんだから気をつけなよ」と言われて、
「若くないので大丈夫です。」と答えたものの
おっちゃんと同じこの小さい島に住む住人に、そんな事言われたら不安になる。
しかし、何が起きたとしても、
私は、そのおっちゃんの 「人」に懸けたかった。
その後、おっちゃんが私にしてくれた事。
・港までチャリで迎えに来てくれた。
・缶ビールとおつまみをくれた。
・島のアート作品の話をたくさんしてくれた。
・ そうめんをゆでてくれた。
・おっちゃんのお家に泊まった旅人達の話をたくさんしてくれた。
・桃を食べさせてくれた。
・マッサージを貸してくれた。
・お風呂に入らせてくれた
・ 綺麗な2階の寝床を貸してくれた。
・朝陽の出る時間と絶景ポイントを教えてくれた。
・朝陽を見る為の自転車を貸してくれた。
・朝陽が出る頃、おっちゃんも海岸に来て、一緒に見てくれた。
・漁師のおっちゃんの仕掛けにかかった蟹を船の上で見せてくれた。
・朝陽を見た後も、ずるずる2階で寝かせてくれた。
・朝食を作ってくれた。
・また泊まりにおいでと言ってくれた。
一人旅をしていると、いろんな人に会う。
会うだけでなく、その人を少し知る事になる。
いろんな人に、いろんな誘いを受けた。
ある国では、いろんな人にだまされた。
だまされながらも、だましている人の人間味がでちゃった時にゃ、
だまされるべくしてだまされたな。
なんて、楽しくなってしまう。
し、心がほっとする。
どんな場合でも目の前に居る人の心に触れて生きたい。
誰かとの関係に、お金なんて物騒なものがつきまとうこの世界。
そんな中でも、心が触れ合うやり取りもある事を
忘れたくない。
私は、
「送らなくていいからね! おっちゃん本当にありがとう!」
とおっちゃん家を去った。
小豆島行きの船を待ちながら、
禿げたペデュキアを、誰に見られるでもないが、
雑に塗り足した。
着岸する船が見え始めた頃、
スクーターがやって来た。
おっちゃんがエメマンを持ってやって来た。
コーヒーは嫌いだけど、
この演出が愛しすぎる。
photographer/SAYA